過去の質問に対する当社の見解・アドバイス

◎ 引用書籍               生コン豆知識へ戻る

“JIS・・・・”→ 経済産業省の日本工業規格

“JASS 5”→ 日本建築学会発行の建築工事標準仕様書・同解説 JASS 5 鉄筋コンクリート工事

“コンクリート示方書”→ 土木学会発行のコンクリート標準示方書

“ポンプ施工指針”→ 日本建築学会発行のコンクリートポンプ工法施工指針・同解説

 

 

1 コンクリートの比重(重さ)とは。

コンクリートの配合は1,000g(1m3)で設計し、その単位あたりの材料として砕石・砂・セメント・水及び混和剤の使用量を算出していきます。この材料全ての単位量を加えたものがコンクリートの重さとなります。

材料の内、砕石・砂の密度は地域により差がありますが、セメント・水は全国的に差がありません。

【例】

砕石・・・・・密度 約2.60g/cm3

砂・・・・・・密度 約2.60g/cm3

セメント・・・普通ポルトランドセメント 約3.15g/cm3

高炉セメントB種         約3.05g/cm3

水・・・・・・密度1.0と仮定、厳密には4℃を1として補正

混和剤・・・・密度1.0と仮定

以上の材料により 約2,200kg/m3 〜 2,300kg/m3(比重の場合 約2.2〜2.3)の範囲になります。

 

 

2 コンクリートに使用する水に適した水質基準等は。

レディーミクストコンクリートを練り混ぜる水の区分は、“JIS A 5308附属書3” により、上水道水・上水道以外の水・回収水に区分されます。上水道水は特に試験を行わなくとも使用できますが、上水道以外の水及び回収水は下記の試験項目を満たせば使用できます。

○ 上水道以外の水

【項目】           【品質】

懸濁物質の量          2g/L以下

溶解性蒸発残留物の量      1g/L以下

塩化物イオン量         200ppm以下

セメントの凝結時間の差     始発は30分以内、終結は60分以内

モルタルの圧縮強さの比     材齡7日及び材齡28日で90%以上

 

○ 回収水

【項目】            【品質】

塩化物イオン量         200ppm以下

セメントの凝結時間の差     始発は30分以内、終結は60分以内

モルタルの圧縮強さの比     材齡7日及び材齡28日で90%以上

 

練り混ぜる水は、油・酸・塩類・有機物・その他コンクリート及び鋼材等影響を及ぼす物質を有害量含まないもので、これがJISにおける練り混ぜる水の品質規定です。なお、検査機関(生コン関係の技術センター及び関係機関)にて行えます。

 

 

3 高炉セメントの冬季の打設は不適当か。

コンクリートの強度管理は20℃の水中養生により7日及び28日の圧縮強度及び曲げ強度により管理しています。季節により強度の変化はありません、しかし、強度発現時期により養生期間・型枠脱枠時期等、確認のため現場にて供試体を養生する管理方法があります。このような場合、温度及び湿度の影響により、温度が高いほど・湿潤状態が長いほど初期強度が大きくなります。セメントの種類も数多くあり季節・用途等により特記仕様されている場合が普通です。

ご質問の高炉セメントの特徴は @長期強度が大きい A硫酸塩などに対する化学抵抗性が大きい B水密性が大きい C水和熱発生速度が小さい Dアルカリシリカ反応の抑制 等の特性を有しています。

上記の結果を検索しますと種類(化学物組成分・混合セメントの割合)によりセメントの特性が生かされており、また、それぞれの用途、時期(季節)、外気温度等により打設現場の養生方法が示されているため、高炉セメントだけが冬季に不適当とは考えられません。

 

 

4 コンクリートが完全に固まった後でも、外気などの温度が変わると伸び縮みがあるそうですが、1℃当りどの程度あるのか。

通常(条件:室温20℃・相対湿度70%)の収縮は1℃につき0.1×10のマイナス4乗です。なお、相対湿度・打設後のブリージング状態(蒸発速度)・環境条件等によっても変化します。

実験結果から室温20℃でも相対湿度が40%では収縮量は50%になることもあります。また、温度が低いほど収縮が小さくなり、冬季の場合、7×10マイナス4乗くらいとなります。

 

 

5 駐車場のコンクリートの表面に亀甲状のひび割れが入っているのですが、原因は何が考えられるか。

一般的にクラック(ひび)の原因として @その部分に圧縮がかかる Aその部分に引っ張りの力が加わる が考えられます。質問内容からの「亀甲状にひび割れる」一つの原因として骨材のアルカリシリカ反応によるクラックが考えられます。この原因は、コンクリートの材料に使用するセメントのアルカリと骨材(砂と石)に含まれるシリカが化学反応を起こしクラックが現れ、そのメカニズムはコンクリートが硬化した後、コンクリート内部が長期スパンでアルカリシリカ反応により徐々に膨張し、その膨張率に表面がついていけず引っ張られてクラックができる、いわゆるマスクメロン現象です。

この症状のパターンとしては、コンクリートを打設してから10年以上経過したものに多く見られ、土間や床より壁に起こることが多く、クラックの深さは浅く、中までひび割れにくいという現象です。

 

 

6 生コンと水セメント比との関係で、普通ポルトランドセメント21N/mm2のスランプ18のコンクリートであれば水セメント比が約62%になりますが、強度を21N/mm2のまま水セメント比を60%以下にできるか。

水セメント比の定め方は、試験練り又は出荷実績により得られる実績強度及び標準偏差を用い、セメント水比と強度の1次関係式と得られた標準偏差、この3つを基に統計的手法により算定します。

同一セメント及び同一粗骨材最大寸法であれば、呼び強度に対して一つの水セメント比しか存在しません。この水セメント比及び標準偏差は、実績による検定(JIS Z 9041)で「有意差がない場合、現在使用中のセメント水比と強度の関係式及び標準偏差を継続使用する」とあります。

しかし、この検定においてどちらかに有意差があると、セメント水比と強度の関係式、或いは標準偏差を見直すこととなり水セメント比は変更されることになります。

このセメント水比と強度の1次関係式は、生コン工場単位で、使用する原材料が異なりますので、呼び強度21を水セメント比60%に定めている工場もあるかと思いますが、同じ工場で同じ原材料を使用する配合の場合、セメント水比と強度の関係式で配合を計算していきますので、水セメント比が変化すれば当然強度も変化していきます。したがって、呼び強度を固定しての水セメント比の変更はできませんし、水セメント比を固定しての呼び強度の変更もできません。

 

 

7 セメント水比が大きくなると圧縮強度が上がるのか。

 セメント水比とは、質量(重さ)における水量1に対してセメントが何割入っているかを比率で表したものです。セメント水比が上がるということは、水量を一定にした場合、セメント量が増えるということですので当然、強度は上がります。

 通常、土木・建築ではセメント水比ではなく、この反対の比率“水セメント比を55%以下で”というように、コンクリートの配合を指定します、水セメント比の場合はセメント水比の逆ですから、当然低いほど強度は上がっていきます。

 

 

8 指針などで水中コンクリートの設計基準強度は大きくても300(kgf/cm2)までしか記述されていませんが、最大どの程度の設計基準強度まで施工が可能か。また、そのときの曲げ圧縮応力度はいくらになるか。

“JISS 5” の 25節 水中コンクリートから<抜粋>

【材料】

a セメントの種類は、特記による。

b 粗骨材の最大寸法は25mm以下とする。

c 鉄筋及び鋼材の種類・径などは特記による。

d 混和材料の種類は特記による、特記のない場合は工事管理者の承認を受けたものを用いる。

【調合】

a 調合は、施工の条件を考慮して水中コンクリートとして適切なワーカビリティーが得られるように、原則として試し練りによって定める。

b 調合強度を定める場合、原則として気温による強度の補正は行わない。

c スランプは21cm以下とし、特記による。

d 水セメント比の最大値は、現場打ちコンクリート杭は60%、地中壁は55%とする。

f 単位セメント量の最小値は、現場打ちコンクリート杭では330kgf/m3、地中壁では360kg/m3とする。

 

“コンクリート示方書” の 施工編 の 23章 水中コンクリートから<抜粋>

【一般の水中コンクリートの配合】

1.スランプの範囲は、トレミーコンクリートポンプ施工の場合13〜18cm 底開き箱、底開き袋施工の場合10〜15cm

2.水セメント比は、50%以下を標準とする。

3.単位セメント量は、370kg/m3以上を標準とする。

 水中コンクリートは、材料分離を少なくするために、粘性に富んだ配合にする必要があるため、適切な混和剤を使用するとともに、細骨材率を適度に大きくすることが必要である。細骨材率は、粗骨材に砂利を用いる場合は40〜45%を標準とし、砕石を用いる場合は適切な粘性が得られるようにさらに細骨材率を3〜5%程度増加させるのが良い。

 

以上の記載内容から、以下の配合条件で得られる配合の中での最大強度になります。

○ 粗骨材の最大寸法は25mm以下

○ スランプは建築の場合18〜21cm 土木の場合8〜15cm

○ 水セメント比は建築の場合60及び55%以下 土木の場合50%以下

○ 単位水量は200kg/m3以下

○ 単位セメント量は建築の場合330kg/m3及び360kg/m3以上 土木の場合370kg/m3以上

 

 配合設計は、その使用する材料及びミキサーの種類により全国の生コン工場の数だけ無数に存在しますので一概には言えませんが、JIS規格品の最大強度で言いますと呼び強度の強度値40N/mm2(旧400kgf/cm2)が今のところ最大で、この呼び強度であればどの工場でも上記の条件をクリアすると思います。

 

 また、そのときの曲げ圧縮応力度は部材設計単位ですので、単純にコンクリート強度で言えば曲げ強度は圧縮強度の1/5〜1/7になりますので、圧縮強度40N/mm2であれば曲げ強度5.7〜8N/mm2になります。

 

追記、平成15年12月20日の“JIS A 5308”の改正により、上記の配合条件が可能な最大呼び強度が50まで規格化されました、ただし、呼び強度50〜60は、高強度コンクリート として生コン工場がJIS認定を得るか、国土交通省の認可が必要となります。

 

 

9 早強コンクリートの硬化時間・運搬時間について。

 セメントの凝結時間のJIS規格値では、

   普通ポルトランドセメント・・・始発60min  終結10h以下

   早強ポルトランドセメント・・・始発45min  終結10h以下  となっております。

 

 セメント成績表による実際の凝結時間は、どちらのセメントも始発:約2時間 終結:約3時間とほとんど変わりません。コンクリートになると若干時間は変化すると思いますが、凝結後硬化し、早強ポルトランドセメントは3日で普通ポルトランドセメントの7日強度に相当する強度を得られます。

 

 運搬時間の限度は、“JIS”、“JASS 5”、“コンクリート示方書”で若干違います。“JIS A 5308” では練り混ぜから荷卸しまで外気温に関わらず1.5時間。“JASS 5”では練り混ぜから打ち込み終了まで外気温が25℃以上の場合1.5時間、外気温が25℃未満の場合は2時間。“コンクリート示方書”では“JASS 5”同様、練り混ぜから打ち込み終了まで外気温が25℃を超える場合1.5時間、外気温が25℃以下の場合2時間となります。

 

 

10 コンクリート工において、施工に起因する悪いコンクリートができてしまう場合の原因と解決策は。

 各工程に分けて説明します。

 

【運搬】

 運搬時間の限度を超えると、スランプ・空気量・セメントの凝結等の変化を介し、主として材料分離・ワーカビリティーの低下を生じます。品質が低下したコンクリートは締め固めが不十分となりやすく「豆板(ジャンカー)」「コールジョイント」などの発生につながり、運搬方法、時間、温度などが主な要因になります。

 

【打ち込み】

 打ち込みに先立ち、天候・気温などを考慮しながら人員の配置・打ち込み区画・配筋状態・コンクリートの品質を考慮し、打ち込み速度・落下角度・落下距離・締め固め方法・打ち継ぎ方法・養生方法・表面仕上げ方法等を計画し、打ち込みに使用する機械器具を準備(故障した場合、打ち込みに大きな支障をきたすおそれのある機械器具は予備を)し、コンクリートの手配・型枠・配筋の検査・埋設物の確認を行います。

 打ち込み方法の基本としては、

@ コンクリートは低い位置から垂直に落とします。(シュート・ホースなどの吐き出し口から打ち込み面までの高さを自由落下高さといい、これが大きすぎると材料分離を生じ、衝撃で配筋を動かし、型枠やスペーサなどに損傷を与えるおそれがあります。コンクリート示方書では自由落下高さは1.5m以下になるように規定しています。)

A 横流しは避けます。(コンクリートを横方向へ移動させると材料分離が生じやすくなります。)

B 均等厚に水平に打ち込みます。

C 2層以上に打ち込む場合は、各層表面を平に均し、十分閉め固めしてから次の層を打ち込みます。下層のコンクリートが固まり始める前に上層のコンクリートを打ち込み、コールドジョイントができないようにします。

 

柱の打ち込みでは、柱の上部まで一気に打ち上げ、引き続いて直ちに「梁」「スラブ」を打ち込むと「柱」「梁」「スラブ」の各部材の沈降量の違いや、「梁」「スラブ」のコンクリートが鉄筋に支えられて沈降が小さいとき、その境目に沈下ひび割れが発生します。柱の打ち込みは、梁下でコンクリートを一旦打ち止め、十分締め固めて浮き水があれば取り除き、コンクリートの状態、コールドジョイント等を考慮しながら約1〜2時間沈降待ちをして十分にコンクリートが落ち着いてから梁、スラブを打ち込みます。或いは、計画的に梁下で打ち止め、2回打ちをします。

 

【締め固め】

 締め固めは、内部の空隙を少なくし、鉄筋・埋設物などをよく密着させ、均一で密実になるよう十分に行わなければなりません。一般的に振動機・突き棒・木槌などによる締め固めがあります。中でもコンクリート棒型振動機による内部振動が最も効果が大きく、特に硬練りコンクリートに対して充沈性を確保し、コールドジョイントを防止する効果に優れています。コンクリート棒型振動機の締め固めの要領として下記の注意が必要です。

@ 振動機を下層のコンクリート中に10cm程度挿入します。

A 振動機の引き抜きは穴が残らないように徐々に行います。

B 振動機は横移動させる目的で使用してはなりません。

C 鉄筋、埋め込み配管、金物などになるべく接触させないようにします。

D 振動時間は、コンクリート面がほぼ水平となり分離が生じない範囲とします。(1ヶ所に長くかけすぎると分離します。)

 

 建築用の軟練りコンクリートの場合には、突き棒によって突き固め、木槌で型枠の外側からたたいて落ち着かせることも有効です。突きの要領は、長い突き棒を1〜2m間隔で分散して型枠に挿入しておき、コンクリートの上昇にしたがってまんべんなく突き固めながら上昇していきます。たたきの要領はコンクリートの上昇していく約10cm下をたたきます。

 

【打ち継ぎ】

 できるだけせん断力の小さい位置に設け、打ち継ぎ面は部材の圧縮力を受ける方向と直角にします。「梁」及び「床」ではスパンの中央付近に、「柱」及び「壁」では床又は基礎の上端に設けます。また、アーチングのコンクリートは、アーチ軸と直角になるようにします。打ち継ぎ目の計画に当たっては、温度変化や乾燥収縮等によるひび割れの発生を予測して、その位置及び構造を定めておく必要があります。

 

【養生】

 コンクリート打ち込み後は、低温・乾燥・急激な温度変化による有害な影響を受けないように、また、硬化中に振動・衝撃及び荷重を加えないようにしなければなりません。初期材齡における急激な乾燥などは、強度の発現が遅れるばかりではなく、表面ひび割れの原因ともなります。養生とはこれらの条件からコンクリートを保護するための措置です。

 

【表面仕上げ】

 コンクリートの表面を仕上げるのは、外観を美しくすることの他、構造物の耐久性、水密性を増すためです。しかし、鏝(コテ)仕上げをあまり入念に行うと表面にセメントペーストが集まり、収縮ひび割れの発生原因となります。

 また、仕上げ作業後、コンクリートが固まり始めるまでの間に発生したひび割れは、タンピング、再仕上げによって取り除くことができます。このようなひび割れは鉄筋位置のコンクリート沈下による場合が多く、タンピングなどの処置によってひび割れを取り除けば再び発生することはありません。

 

【型枠・支保工】

 コンクリートの水分が型枠に吸収されると、ワーカビリティーを阻害し、仕上がり面が損なわれることが多く、吸水のおそれがある部分は型枠内に水が溜まらないように注意しながらあらかじめ湿しておく必要があります。合板を使用する場合は、樹種によってはコンクリート面に着色、変色、硬化不良などの欠陥をもたらすこともあり合成樹脂加工などの表面処理加工が施されます。

 

 

11 コンクリートのスランプ8cm、空気量4%となるようにしたいのですが、AE剤やAE減水剤を使わずに合わせる事ができるか。

○ 結論

 プレーンコンクリートでスランプ8cm、空気量4%にするのは難しいと思われます。

○ 理由

 スランプ:AE剤、AE減水剤を使用しなくとも調整できます。

 空 気 量:AE剤等を使用しないとエントラップトエア(練り混ぜ中に自然に取り込まれる空気泡)しか入らず多くても2%程度で、空気量4%のコンクリートの場合はAE剤等を用いてエントレインドエア(AE剤または空気連行作用がある混和剤を用いてコンクリート中に連行させた微細な空気泡)を入れる必要があると思われます。

 

 

12 先行モルタルとはどんなものか。@成分、作り方、粘性(流動性) A普及している理由 B誰が(ゼネコン又は生コンメーカー、その他)手配(用意)するのか。 C外国ではドライパウダータイプの潤滑剤が使われているが、国内でも販売できる可能性があると思うか。 D誰が、或いは何処で作られているのか。 E日本で普及している理由は。

コンクリートポンプ工法における先送りモルタルについて“ポンプ施工指針”より抜粋します。

【圧送】

1.コンクリートの圧送開始に先立ち、ポンプ及び配管の内面の潤滑性保持などのために、水及びモルタルを圧送する。

2.モルタルの調合(配合)及び所要量は、圧送するコンクリートの調合及び配管の径並びに長さによって定める。

3.管出口において吐出されるモルタルの状態を監視し、明らかに品質が損なわれた部分や水が異常に混入した部分などは撤去する。

4.先送りされた健全なモルタルは、薄いそうになるように広い範囲に分散させる。1ヶ所にまとめて打ち込んではならない。

5.ポンプの運転は、配管先端からモルタルが吐出されるまでは、圧送圧力の上昇に注意しながら、ポンプの最大吐出量の1/4〜1/3程度の低吐出量で行う。

6.ホッパーへのモルタルの投入が終わったら、引続き正規のコンクリートを投入し、圧送運転に入る。但し、モルタルが配管先端から吐出されることを確認するまでは低吐出量運転を続ける。

7.配管先端からモルタルが出始めるまでは、配管の状態などに注意を払い、危険防止に努める。

 

コンクリート圧送に先立ち、水及びモルタルを圧送する、その目的は以下の点にあります。

1.ポンプ及び配管内面をあらかじめ湿らせておく。

2.ポンプ及び配管内面に、コンクリート圧送時の潤滑剤となるモルタルの薄い層を形成させておく。

3.配管ジョイント部で、配管とゴムパッキングの間に空隙にモルタルを圧入・充填し、管路の水密性及び気密性を保持する。

 

@の質問【成分、作り方、粘性(流動性)】

 先送りモルタルの目的は、上記述のようなことですが、その成分はモルタルですので「水」「セメント」「細骨材(砂)」の混合物です。

 作り方は、セメントと細骨材の単位容積比率による練り混ぜ方法が一般的で、セメント1に対して、細骨材をどれだけ入れるかで決まります。粘性(流動性)は、モルタル比率と水セメント比で調整します。粘性と水セメント比は、打設するコンクリートのスランプ及び水セメント比以下に合わせるのが一般的です。

 

Aの質問【普及している理由】

 施工上ポンプ打設の現場は、車両が入っていけない場所か高所現場が主なので、モルタル以外の物を先送りに使うと、その物の撤去作業が発生しますので、そのまま現場で打ち込むことができるモルタルを使用しているのだと思われます。

 

Bの質問【誰が(ゼネコン又は生コンメーカー、その他)手配(用意)するのか】

 これは、地域性や慣習や取決め契約等でいろいろなケースがありますので、誰とは決まっていません。打設計画の打合せで、施工業者・生コン工場・ポンプ圧送業者との話し合いで決めていくのだと思われます。

 

Cの質問【外国ではドライパウダータイプの潤滑剤が使用されているが、国内で販売できるか】

 コスト・材料手配の迅速性や施工における問題点がなければ、主流になるかも知れません。しかし、先送りモルタルの代用のためだけであればその種の潤滑剤の在庫を抱えておくには、難しいのではないかと思われます。

 

Dの質問【誰が、或いは何処で作られているか】

 生コン工場であれば何処でも作れます。

 

Eの質問【日本で普及している理由】

 今までこの先送りモルタルに変わる工法や材料が他にない点、モルタルだと全国の生コン工場で容易に入手できる点、などと思われます。

 コスト面やワーカビリティーの良い画期的な潤滑剤を開発しないとモルタルに取って代わることは難しいと思われます、また、ポンプ車の性能が毎年上がっていますので、100m位の配管なら、先送りモルタルなしで圧送するポンプ車も現存するそうです。

 

 

13 コンクリートに砂糖を混ぜると固まらないのか。

 砂糖を実際に混入する必要がないため、研究結果でしか分かりませんが、一定量までは固まる時間が長くなりますが、それを超えると逆に固まる時間が短くなります。

 

 

14 コンクリートの圧縮強度試験の7日から28日強度の推定式は。

 生コンクリートを納入した生コン工場で使用する原材料の種類及びその地域の環境、特に一日の平均気温によってそれぞれ異なります。

 JIS認定工場であれば“JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)”により報告の義務がありますので、購入者からの要求があれば資料を提示するようになっています。参考までに当工場の標準養生における推定式は次のとおりです。

 

 普通ポルトランドセメント使用 : 28日強度=7日強度×1.09+9.02

 高炉セメントB種使用     : 28日強度=7日強度×1.32+5.78

                                   単位:N/mm2

 

 

15 生コンクリートを注文する際の「強度」「スランプ」「セメント」とは。

 JIS規格品のコンクリートの種類には、普通コンクリート・軽量コンクリート・舗装コンクリート・高強度コンクリートの4種類があります。ここでは、一般的に良く使われる普通コンクリートについて説明します。

 

【呼び強度】

 JIS A 5308に規定するコンクリートの強度の区分で、普通コンクリートには18・21・24・30・40・42・45の種類があり、数値が大きくなるほど強度が増します。

 

【スランプ】

 フレッシュコンクリート(まだ固まらない状態にあるコンクリート)の軟らかさの程度を示す指標の1つで、数値が大きくなるほど軟らかくなります。(呼び強度18で粗骨材の最大寸法が20mmの場合では、スランプ8cm・10cm・12cm・15cm・18cmのJIS規格品があります)

 

【粗骨材の最大寸法】

 質量で90%以上通るふるいのうち、最小寸法のふるいの呼び寸法で示される粗骨材の寸法のことを言い、20mm・25mm・40mmの3種類があります。地区によって異なるかもしれませんが、長崎では20mm・40mmが主流で使用されています。

 

【セメントの種類】

 種類はたくさんありますが、一般的に使用されるのがN(普通ポルトランドセメント)、BB(高炉セメントB種)の2種類です。

 

【注文の仕方】

 呼び強度・スランプ・粗骨材の最大寸法・セメントの種類順で注文します。

 <例>

 18−8−20 N

(呼び強度18N/mm2 スランプ8cm 骨材寸法20mm 普通ポルトランドセメント)

 

 

16 コンクリートの呼び強度と設計強度の違いは。

 【呼び強度】とは、

 JIS規格のJIS A 5308により定められた強度で、呼び強度自体には単位はありませんが、呼び強度の強度値としてN/mm2単位で表示します。

 【設計強度】とは、

 製品のばらつきを考慮し、その呼び強度を下回らないために生コン工場の実績により算出した強度で、必ず呼び強度より高く設定しています。

 

 

17 @スランプの硬いコンクリートの良いところ。 Aどうして土木はスランプが硬いのか。

 @コンクリートを練り混ぜるうえで最も品質に影響を及ぼす材料が水です。水量が多いと強度低下になり、他の材料が分離し硬化しない場合もあります。しかし、セメントと水の化学反応で硬化させるコンクリートにとって水分が必要不可欠なので、なるべく少ない単位水量で練り混ぜることができれば良いコンクリートになります。

  したがってスランプの硬いコンクリートは、単位水量を少なくでき、材料の大小粒が偏りにくく満遍なく打ち込む事ができるので、良質なコンクリートになります。

 

 A建築に比べ土木の場合は、その部材が大きく鉄筋の間隔も広いので硬いコンクリートでも施工可能なのです。しかし、土木工事の中でも擁壁等で部材が薄く鉄筋間隔が狭い場合は、建築と同じスランプで打設することがあります。

 

 

18 スラッジ水は、練り混ぜ水として使用可能か。

 スラッジ水とは、コンクリートの洗浄排水から骨材を取り除いて回収した懸濁水です。スラッジ水はJIS A 5308附属書3に規定している年1回の品質検査とスラッジ固形分率が基準値内ならコンクリート練り混ぜ水としてJIS規格では使用できますが、“JASS 5”では、“計画共用期間の級が「一般」、「標準」でスラッジ水を用いる場合は、工事管理者の承認を受ける。また、級が「長期」の場合は、スラッジ水を用いない。”と明記しています。

 

 

19 雨天時にコンクリートを打設しても大丈夫か。

 生コン打設には雨が降りそうな曇りの日が最適です。ただし、打設した生コンの表面に雨が溜まり、それがコンクリートと共に流れ出す雨量でしたら品質の低下につながります。ごく少量の雨(目安として傘を差すか差さないか)は影響ありません。

 

 

20 「バッチングの時間」とは。

 生コン工場の製造プラント内のミキサー内への材料投入開始からコンクリートとして練り上がるまでの時間です。

 バッチングとは生コンを練り上げる単位のことで、1バッチ練るには @材料計量 Aホッパーへ材料投入 B練り混ぜ(混合) C排出の流れとなります。

 したがいまして、バッチングの時間とはAとBにかかる時間のことになります。

 

 

21 @骨材の実績率は大きくなるとコンクリートのスランプも大きくなるのか。 A細骨材率が大きくなるとコンクリートのスランプも大きくなるのか。また、空気量も大きくなるのか。 B空気量が少ないときにどうやって増やすのか。また、出すぎのときにはどうやって減らすのか。 Cスランプが軟らかいときに空気量が出やすいのか、それとも硬いときに出やすいのか。

@の質問(骨材の実績率は大きくなるとコンクリートのスランプも大きくなるのか)

 骨材の実績率が大きくなるのは次の3つが考えられます。

(1)骨材の最大寸法が大きな骨材

(2)骨材粒形が球形に近い骨材

(3)粒度曲線が直線に近く満遍なく大小粒がある骨材

(1)(2)の場合、スランプは大きくなります。(3)の場合はスランプの影響が異なり、理論上では大体スランプは大きくなりますが、骨材の実績率以外の品質による影響がありますので、試験練りにより確認した方が良いと思われます。

 

Aの質問(細骨材率が大きくなるとコンクリートのスランプも大きくなるのか、また、空気量も大きくなるのか)

 細骨材率が大きくなるとは細骨材を増やすことなので、単純に細骨材だけを増やすとコンクリートは硬くなり、スランプは小さくなります。空気量は理論上、細骨材0.3mm、0.6mm辺りの粒形がコンクリートを練り混ぜたときに、連行エアとして空気量を増やす傾向があり、細骨材率を大きくすると空気量は大きくなりますが、細骨材率の変化に伴いスランプなどの別の練り上がり状態が変化しますので、一概に言えないと思います。

 

Bの質問(空気量が少ないときにどうやって増やすのか、また、出すぎのときにはどうやって減らすのか)

 JIS工場のコンクリートは、単位水量を減らしフレッシュコンクリートの状態を良くするため、AE減水剤という混和材料を使用したAEコンクリート製品を出荷しています。このAE減水剤の中のAE剤の添加量の変化により空気量を調整します。

 

Cの質問(スランプが軟らかいときに空気量が出やすいのか、それとも硬いときに出やすいのか)

 一般的にスランプの変化による空気量の変化は影響ないとされていますが、過去の実績と経験からスランプが軟らかい方が空気量は出やすい傾向があります。

 また、同じ配合を練り混ぜた場合、空気量の大きいほうが、エアのボールベアリング効果によりスランプは大きくなります。

 

22 呼び強度と水セメント比の関係は。

 呼び強度と水セメント比の関係は、各生コン工場で使用する原材料が異なりますので、それぞれの工場で違います。その両者の定め方も、強度を先に定めるか水セメント比から定めるかの違いがあります。ただし、生コン工場での配合設計において同じ原材料を使用する配合(呼び強度・スランプ・粗骨材の最大寸法・セメントの種類を指定した配合)の場合、工場にとっての呼び強度と水セメント比の関係は1つしかないことです。

 レディーミクストコンクリートの場合、JIS規格JIS A 5308で呼び強度・スランプ・粗骨材の最大寸法・セメントの種類の組み合わせでJIS製品になるように規格化されていますので、その呼び強度18・21・24・27・30・33・36・40・42・45・50・55・60及び曲げ4.5の14種を標準として配合設計しています。指定事項により水セメント比の指定はできますが、その場合は呼び強度の指定はできなくなります。仮に、水セメント比60%と限定した場合に、それに適合する呼び強度が上記14種の中にない工場では、JIS規格外品となります。

 配合設計では、水セメント比と強度の関係式で配合を計算していきますので、水セメント比が変化すれば当然強度も変化していきます。したがって、呼び強度を固定しての水セメント比の変更はできませんし、水セメント比を固定しての呼び強度の変更もできません。

 

 

23 コンクリートの仕上がりの色が白くならずにまばらになっています。原因は何が考えられるか。

 硬化後のコンクリート表面に現れる黒染等について次のことが考えられます。

@ 季節や地域環境等により、その打設したコンクリート部分に陽が当たらず、風通しが悪く、湿った状態が長く続くとカビや藻類が発生し、黒ずんだ状態になる場合があります。

 

A 打設する部分に何らかの有害物質があれば、それがフレッシュコンクリートと混ざり、表面上に浮き出てくる場合があります。例えば、以前にアスファルト舗装していた所などは、その油分が残っていてフレッシュコンクリートと混ざる可能性があり、型枠や鉄筋などにも油分や浮き錆などがあった場合、それらと反応して黒ずんだ状態になる場合もあります。

 

B ごくまれに、打設する部分の土壌や湧き水や地下水等にセメントの成分と化学反応する物質を含んでいる場合があり、それが原因の場合もあります。

 

C 特殊なケースですが、コンクリートの材料のほとんどが鉱物を加工したものですから、その中の鉄分がフレッシュコンクリートの過程において、バイブレーターやタンピングなどのコンクリートを締め固める際の振動で磁気や電磁波などの影響により表面に浮き出し表面が黒ずんだ事例もあります。

 

D コンクリート自体に有害物質が混入した場合なども原因として考えられますが、コンクリート製造工場がJIS工場なら、JIS規格により有害物質を含む材料を使用できないようになっていますので、原因としての可能性は低いと思われます。

 

E コンクリート配合が違う場合、特にセメントの種類と骨材の種類によってコンクリート自体の色が違う場合があります。

 

 

24 コンクリート打設後、型枠のまま何日ぐらい置けば十分な養生になるか。

 基礎・梁の側面・柱・壁のせき板の保存期間は、その現場の平均温度とコンクリート自体の強度によって定まってきます。“JAS S5”によると、コンクリート強度が5N/mm2以上になった場合と普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートで平均温度が20℃以上の場合、材齡4日以上、平均温度が10℃以上20℃未満の場合は材齡6日以上となっています。

 平均温度とは、現場においてコンクリート打設終了後から、そのせき板の保存期間までの平均した外気温のことです。材齡とは、コンクリート打設終了後から日数のことで、材齡4日の場合はコンクリート打設終了後96時間経過した時となります。

 

 

25 レディーミクストコンクリートの粗骨材の大きさが違うことで何か違いが出てくるか。

 同一強度・スランプにおいて粗骨材の最大寸法が大きくなれば単位水量を減らすことができます。コンクリートにとってできるだけ単位水量が少ないほうが良質なコンクリートになります。また、同一水セメント比の場合、単位水量を減らすことができれば単位セメント量も減らすことができるので経済的なコンクリートになります。

 しかし、施工効率上、構造物の種類・部材寸法・鉄筋間隔などにより粗骨材の最大寸法は制限されるので、その現場での施工条件にあった骨材寸法となります。

 土木施工現場の場合、建築に比べ部材寸法、鉄筋間隔などが大きいので骨材寸法40mmを使用しています。ダム工事などでは骨材寸法80〜100mmのコンクリートで施工することがあります。

 

 

26 コンクリートの「凍害」について。

 コンクリートの凍害がなくなるということはないでしょう。なぜなら、セメントの水との化学反応により硬化していくコンクリートにとって水は必要不可欠な材料なのです。水分を含んでいる以上、凍害を受けると思われます。

 コンクリートの凍害とは、フレッシュコンクリートの段階でセメントと水の硬化反応速度より、気温低下による水分凍結速度が速い場合に起きる現象で、セメントと水との化学反応が促進しづらくなるために発生します。

 害として凍結作用を受けやすい部材の表面に起きる表面剥離、硬化途中に水分が凍って発生する凍結クラックなどがあり、最悪の場合はコンクリート全体がシャーベット状になり材料分離が起こり全く硬化しなくなる状態になります。

 部材の形状による影響も考慮する必要があり、塊の大きなマスコンクリートなどは凍害を受けにくいのですが、土間・スラブ・壁など部材が薄い場合や単独梁・庇・橋梁などの外気にさらされやすい部材などは凍害を受けやすくなります。

 材料に関する寒中コンクリート対策としては、なるべく単位水量を少なくするように、粗骨材最大寸法の大きな配合やスランプが小さい配合など選択し、減水効果のある混和材料(減水剤・AE減水剤)の使用、より減水効果のある高性能AE減水剤の使用、その他凍害対策のための混和材料に防凍剤と言うものがあります。

 コンクリート自体の水和発熱を利用する方法として、40℃程度の温水とスチーム等により骨材温度を上げた材料により練り混ぜ、荷卸し地点でのコンクリート温度を10℃以上にする方法、AE減水剤の促進形を使用する方法、水セメント比の小さい配合(温度補正により強度を高めに設定した配合)を使用する方法、高強度コンクリートを使用する方法などがあります。

 一般的にコンクリート自体の水和発熱により外気温が0℃までなら凍害を受ける危険性は少ないとされていますが、外気温がマイナス3℃以下(コンクリート温度が5度以下)になるとその対策が必要となります。

 荷卸し地点では囲いを設け採暖し、施工時には密実なコンクリートにすることが重要です。初期養生において打設後3日以上は部材周辺の温度を5℃以上に保つ必要があります。

 凍結融和作用を受けるコンクリートの連行空気量の標準値として、日本建築学会発行の建築工事標準仕様書・同解説JAS S 5鉄筋コンクリート工事より、粗骨材最大寸法20mm、25mmにおいて一般のコンクリート5.0%、高流動コンクリート5.5%、高強度コンクリート4.5%、粗骨材最大寸法40mmにおいては4.5%となっています。